よくある相談Q&A

過失相殺って何ですか?【弁護士が解説】

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会  

保有資格 / 弁護士

専門領域 / 個人分野:交通事故 法人分野:企業顧問(労働問題)   


掲載日:2015年7月22日|最終更新日:2019年11月14日

弁護士西村裕一追突事故や信号無視といった加害者が明らかに原因があるケースとは異なり、被害者側にも事故の原因につながる何らかの事情があった場合に、賠償金を調整することが過失相殺です。

過失相殺は、割合をめぐって、保険会社や相手方本人と揉めることが多くあります。

過失相殺の交渉は専門家である弁護士に相談、依頼することも大切になってきます。

過失相殺とは?

交通事故にあった場合、よく「10:0」とか「8:2」だとかいう話を聞くと思います。

これが、過失相殺(過失割合)のことです。

交通事故は、追突事故のように明らかに加害者側に責任があるケースだけでなく、正面衝突や交差点での事故のように、互いに交通事故の原因があるというケースも多くあります。

こうしたときに、被害者からの損害賠償請求に対して、「こちらが全額を負担するのは、おかしい。そちらにも過失があるので、減額されるべき」という主張がなされることになります。

この相手方からの主張が過失相殺です。

過失相殺の根拠は、民法722条2項にあります。

民法722条2項
「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」

交通事故の損害賠償責任は、自賠責保険法3条の責任も含め、不法行為責任に基づいています。

この不法行為責任には、損害の公平な分担という考え方が取られています。

具体的には、被害者に何らかの原因があった場合に、被害者に生じた損害のすべてを加害者に負わせるのは妥当ではなく、被害者の責任部分については、減額するというのが損害の公平な分担に沿うとされているのです。これが、過失相殺という制度です。

 

 

過失相殺の決め方

具体的なケースでどの程度、被害者側に過失(落ち度)があったとされるかについては、法的判断を伴うため、最終的には裁判所で判断が下されます。

民法722条2項も「裁判所は、これを考慮して」と定めています。

もっとも、交通事故は減少傾向にあるといえ、全国で毎日のように発生しています。

こうした交通事故の過失割合に何らの目安もなく判断がなされると、それこそ公平性の観点から妥当でなくなることになります。

また、目安が何もないと、事故の当事者の示談交渉もまとまらない可能性が高くなってしまいますし、交通事故は追突事故や交差点での事故、進路変更の際の事故や駐車場から道路へ出る際の事故など、いくつかの類型に分類することができます。

そこで、交通事故の賠償実務においては、基本的な過失割合が定められており、それを目安として、具体的なケースでの割合が決められているのが実情です。

保険会社や弁護士、裁判所が交通事故の過失割合を判断していく際に、普段使用しているのが、別冊判例タイムズの『民事交通事故訴訟における過失相殺率の認定基準』(東京地裁民事交通訴訟研究会編)という書籍です。

この本では、以下の事実により、区別がなされています。

① 事故当事者の性質

交通事故にあった人が、どのような乗り物に乗っていたのかどうかによって、目安が整理されています。

具体的には、

  • 歩行者 対 四輪車・単車(バイク)
  • 歩行者 対 自転車
  • 四輪車 対 四輪車
  • 単車(バイク) 対 四輪車
  • 自転車 対四輪車・単車(バイク)

② 道路の場所

また、交通事故は一般道だけでなく、高速道路や駐車場でも起こりますので、

  • 高速道路上の事故
  • 駐車場内での事故

という目安も用意されています。

③ 進行方向、信号の有無と色、横断歩道の有無、道路形状等

そして、①、②で区別された類型ごとにそこからさらに、以下のような事情から事故分類が細かく区分けされています。

  • 当事者の進行方向(直進車同士の事故か、右折と直進車の事故か)
  • 信号の有無と色(信号はあるかどうか、そのときの信号の色は何色か)
  • 横断歩道があるかどうか
  • 道路の形状(一旦停止があるか、優先道路となっているか)

以上を踏まえて、実際の事故に近い事故類型を選択することになります。

そして、そこに記載された基本の過失割合を踏まえて、ベースとなる過失割合を決定することになります。

④ 過失割合の修正

③まででベースとなる過失割合を決定したら、個々の事案ごとに修正要素がないかどうかを判断します。

主な修正要素としては、以下のとおりです。

  • 歩行者が児童や高齢者である
  • 15キロ以上の速度違反
  • 合図なしの右左折
  • 徐行なし
  • 飲酒運転
  • ながら運転(重大な前方不注意)

こうした修正要素は、③までで決定した事故類型ごとに設定されているので、それを踏まえて、該当する事情がないかをチェックする必要があります。

 

 

過失相殺がなされると

交通事故で過失相殺が適用される場合、賠償金額が減少することになります。

このときに減少する項目は、治療費や慰謝料、休業損害といった損害の一部で減額するのではなく、被害者の方に生じた損害額全体から過失部分を控除することになります。

具体的な事例を挙げてご説明します。

具体例被害者が交通事故で治療費や休業損害、慰謝料で合計500万円の損害を負った場合、被害者側に2割の過失があるとします。

この場合に加害者に対して請求できる賠償金額は、

500万円 ×(1-0.2)= 400万円 となります。

このように、過失相殺がなされると、損害の全体から被害者の過失額が減少することになります。

先ほどの事例で、治療費が150万円かかっており、すでに保険会社が一括対応により全額を支払っているとします。

そうすると、本来 150万円 × 80% = 120万円 を保険会社が負担すればよく、30万円多く負担している状態となります。

この30万円をどこで調整するかというと、最終的な示談交渉の段階です。

具体的には、

400万円(保険会社が賠償すべき金額)− 150万円(既払金)= 250万円

となり、被害者に最後に手元に残る賠償金が減ってしまうという形になります。

 

 

過失相殺が問題となる場合のポイント

このように過失相殺は、被害者の賠償金に大きな影響を及ぼすものですので、非常に重要な問題です。

そこで、過失相殺が問題となる場合のポイントをいくつか整理しておきます。

早い段階で証拠収集を行う

過失相殺が争点となる場合、よく当事者間で事故態様そのものに争いが生じます。

被害者は自分の信号は黄色だったと認識していても、加害者は赤信号だったと主張すると言った具合です。

こうした事故態様については、人身事故の場合は警察署で作成される実況見分調書が重要な証拠となります。

公的機関であり第三者が作成する書類ですから、ここに記載されている事項は裁判所としても客観的な証拠として高い証拠価値を認める傾向にあります。

また、目撃者の人の証言も当事者以外の人の発言として重視されます。

事故から時間がたってから証拠を集めようとしても、その時点では残っていないことも多くなります。

そのため、以下のような証拠の収集作業を行っておくことが非常に重要です。

  • ドライブレコーダーを積んでいる場合は、データのバックアップを取る
  • 目撃者がいる場合には、連絡先を聞いておく
  • 周囲に防犯カメラが設置されていないかを確認する
  • 事故直後の車の状態を写真でとっておく

 

専門家である弁護士に相談する

弁護士西村裕一先ほど解説したとおり、交通事故に関する過失相殺は、事故類型に応じて目安となる過失割合が決まっています。

そのため、その類型に沿った事情を主張しなければ、当事者の主張は説得的に過失割合に影響を与えることにならず、解決が困難になってしまいます。

そこで、過失相殺が問題となった場合には、証拠収集をした上で、あるいは同時並行で交通事故を専門とする弁護士に相談して、アドバイスを受けるべきです。

弁護士に依頼することで、保険会社との示談交渉を弁護士が被害者に代わって行うことができ、適切な修正を受けることができる可能性が高まります。

右直事故の直進車で、過失割合5:95にて解決した事例はこちらをご覧ください。

 

 

関連動画はこちら

関連Q&A

 

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会  

保有資格 / 弁護士

専門領域 / 個人分野:交通事故 法人分野:企業顧問(労働問題)   

実績紹介 / 交通事故の相談件数年間300件超え(2019年実績)を誇るデイライ

ト法律事務所のパートナー弁護士であり、北九州オフィスの所長を務める。

交通事故をめぐる問題に関して、NHK、KBCなどのメデイアへの取材実績があ

り、弁護士向けのセミナー講師としても活動。


交通事故よくある相談Q&A一覧

なぜ交通事故は弁護士に依頼すべきなのか?

お問い合わせ Web予約