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死亡事故で相続放棄すると死亡保険金請求できない?【弁護士が解説】

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会  

保有資格 / 弁護士

専門領域 / 個人分野:交通事故 法人分野:企業顧問(労働問題)   


死亡保険金についての質問です。

交通事故で死亡した被害者の相続人が相続を放棄すると、死亡保険金請求もできなくなるのですか?

弁護士の回答

契約者と被保険者が同一人の場合、死亡保険金請求権は保険金受取人の固有の財産とみなされるので、相続を放棄しても保険金を受け取ることができる場合があります。

例えば、生命保険の死亡保険金、自損事故傷害保険・搭乗者傷害保険の死亡保険金などが当てはまります。

また、自賠責保険における遺族固有の慰謝料請求権についても、相続放棄していても保険金請求は可能です。

 

相続放棄とは

相続放棄とは、相続財産の一切を放棄することができる制度です。

プラスの財産もマイナスの財産も全て放棄するということです。

資産に比べ明らかに大きな負債があるときや、相続に伴うトラブルに巻き込まれたくないときなどに、相続放棄することで借金を負わずに済み、トラブルを回避することができます。

相続放棄は、相続開始を知ってから3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません。

相続人が複数いる場合は、一部の人だけが放棄することも可能ですし、全員放棄というのも可能です。

交通事故で死亡した被害者の相続人が相続放棄をする場合には、交通事故の賠償金の見込み金額を算出して、被害者の負債の金額と比較し、負債の金額の方が高額であれば、相続放棄を検討したほうがよいかもしれません。

もっとも、交通事故により死亡した場合、賠償金は高額になることが多いため、相続放棄するにあたっては慎重に検討すべきでしょう。

死亡事故による損害賠償について詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

相続放棄と生命保険死亡保険金

生命保険における死亡保険金の受取人は保険契約者または被保険者の相続人であることが一般的です。

しかし、保険金受取人の保険金請求権は、生命保険契約の成立時に保険受取人に帰属するもので、死亡した保険契約者または被保険者から相続したものではありません。

つまり、死亡保険金を請求する権利は相続財産ではなく、保険金受取人の固有の財産といえます。

したがって、相続人が相続を放棄したとしても、生命保険の死亡保険金を請求することはできます。

ただし、税制上、死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。

相続放棄と生命保険金の受け取りについて詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

相続放棄と自動車保険

死亡した被害者の加害者に対する損害賠償請求権は、相続財産となります。

したがって、被害者の相続人が相続放棄をすれば、加害者へをすることはできません。

そのため、加害者の任意自動車保険に組み込まれている対人賠償保険、対物賠償保険への請求はできなくなります。

被害者自身が契約していた自動車保険の場合

もっとも、被害者自身が契約していた被害者自身の任意自動車保険の自損事故傷害保険、搭乗者傷害保険の死亡保険金請求権について、判例があります。

判例 自損事故傷害保険、搭乗者傷害保険の死亡保険金請求権の裁判例

生命保険の死亡保険金請求権同様、相続財産ではなく保険金受取人の固有の財産であると判例は認めています(名古屋地判H4.8.17、大阪地判H16.12.9、盛岡地判決H21.1.30など)。

自損事故傷害保険
自損事故傷害保険は相手のいない単独事故で、契約者または被保険者、同乗者らが死傷し、自賠責保険から保険金が出ない場合に保険金が支払われます。
搭乗者傷害保険
任意自動車保険の対象自動車に搭乗していた人(運転手を含む)が、自動車事故によって死亡、怪我、後遺障害を被った場合に定額の保険金が支払われます。

 

 

相続放棄と遺族の固有の慰謝料

死亡事故が発生した場合、被害者本人の慰謝料に加えて、近親者固有の慰謝料も請求することができます。

近親者固有の慰謝料請求を認める民法711条では、近親者の範囲は、被害者の父母、配偶者、子とされています。

もっとも、最高裁判所は、父母、配偶者、子と実質的に同視できる身分関係が存在し、被害者が死亡したことで甚大な精神的苦痛を受ける者については、固有の慰謝料を認めてい
ます。

個別の事案によって判断は異なることになりますが、具体的には、以下のような裁判例があります。

判例 固有の慰謝料を認めた裁判例

  • 内縁の配偶者【神戸地判H14.8.29】
  • 妹【大阪地判H18.2.16】
  • 兄【東京地判H21.7.8】
  • 再婚相手の連れ子【大阪地判H19.3.29】

こうした近親者固有の慰謝料について、最高裁判所は、遺族固有の慰謝料請求権は相続財産ではなく、相続放棄をしても請求できると判示しています(最判H12.3.9)。

交通事故遺族の方は、心身ともに疲弊し、保険金請求手続も大きな負担となることでしょう。

適切な賠償を得るためにも、専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。

ご相談はこちら「無料相談の流れ」からどうぞ。

 

 

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執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会  

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専門領域 / 個人分野:交通事故 法人分野:企業顧問(労働問題)   

実績紹介 / 交通事故の相談件数年間300件超え(2019年実績)を誇るデイライ

ト法律事務所のパートナー弁護士であり、北九州オフィスの所長を務める。

交通事故をめぐる問題に関して、NHK、KBCなどのメデイアへの取材実績があ

り、弁護士向けのセミナー講師としても活動。


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