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主婦の休業損害はいくら請求できる?【計算方法を弁護士が解説】

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会  

保有資格 / 弁護士

専門領域 / 個人分野:交通事故 法人分野:企業顧問(労働問題)   


弁護士西村裕一主婦の休業損害は、賃金センサスを用いた裁判基準での計算方法と、日額5700円をベースとして計算する自賠責保険の基準といった複数の基準があります。

したがって、どの基準を用いるかによって金額も変わってくるため、適切な補償を受けるためには、計算方法をしっかりと理解しておくことが大切です。

 

休業損害とは

寝たきり交通事故によるけがのために仕事を休んだり、治療のために早退したりすることで収入が減少したことに対する損害をいいます。

入院のケースがわかりやすいのですが、病室で1日過ごすことになれば、仕事を休まざるをえません。

そうすると、会社員の場合、有給休暇を使用しない限り、働いていませんので給料は得られないことになります。

自営業の場合も、営業を行うことができなければ売上をあげることはできませんので、収入が得られないことになります。

このように休業損害とは、収入の減少を損害とするもので、治療費などの積極損害(事故が原因で費用がかかったもの)とは異なり、消極損害(事故により失ったもの)に位置づけられる損害です。

 

 

主婦に休業損害が認められる?

主婦の場合、家事や育児を行っています。

この家事や育児は家族を支えるために必要不可欠なものです。

もっとも、主婦の方は家事や育児を行ってお金を得ているわけではありません。

その意味では、現実的な収入はゼロです。

そうすると、主婦は、事故により家事ができなくなったとしても、収入が減っているわけではないので、休業損害は認められないという考え方もできなくはありません。

しかしながら、家事や育児も人に依頼すれば当然に費用を要するのであり、金銭的な評価をすることは可能です。

交通事故の賠償実務において、主婦にも休業損害は認められることに争いはなく、実務上確立されています。

最高裁判所も主婦(家事従事者)の休業損害を認めています(最高裁昭和50年7月8日判決)。

 

 

家事従事者とは

主夫家事従事者とは、性別・年齢を問わず、家族のために料理、洗濯、掃除等に従事する人のことです。

こうした仕事に従事する人のことを家事従事者といいます。

したがって、社会一般に「主婦(主夫)」とされる方は家事従事者にあたります。

上記説明からもわかるとおり、男性の「主夫」も家事従事者となります。

このように性別や年齢を問わずに主婦(夫)的労務に従事している人は家事従事者として、休業損害の対象となります。

 

 

一人暮らしの場合は家事従事者といえるか?

結論からいえば、一人暮らしをしている方は「家族のために家事」をしているわけではないので、家事従事者には該当しません

家事従事者として休業損害が認められる理由は、他人(家族)の生活のために家事を行っていることから、会社員として働いているのと同様に家事・育児には経済的な価値があるという考えからです。

この考え方からすると、一人暮らしで家事を行っている場合は、自分の生活のために行っているにすぎないため、主婦(夫)の休業損害は認められません。

シングルファザーなお、結婚したものの後に離婚した方の中には、シングルマザー(シングルファザー)の方もいらっしゃいますが、シングルマザーは、子どもの育児、家事を行っているという点では主婦と何ら違いはありません。

そのため、シングルマザー(シングルファザー)も主婦(夫)の休業損害を請求することができる場合があります

 

 

主婦の休業損害の計算方法

ここまで解説してきたように、主婦にも休業損害は認められます。

主婦(夫)は現実的に収入が減ったわけではないので、休業損害をどのように計算するかが問題となります。

この点、交通事故の賠償実務では、主婦の休業損害について、以下の3つの基準があります。

基準1自賠責保険の基準

自賠責保険の基準は、国が加入を義務付けている自賠責保険における計算方法です。

自賠責保険の基準では、主婦(夫)の休業損害について、休業1日あたりの金額を 5700円として、休業日数をかけることで計算します。

休業日数は治療実日数を用います。

具体例 180日(6か月)の期間に90日の通院があった場合


5700円 × 90日 = 51万 3000円 が自賠責保険の基準での休業損害額となります。

自賠責保険の限度額

ただし、注意しなければならない点があります。

それは、自賠責保険には限度額があるということです。

自賠責保険の限度額は 120万円であり、この 120万円には治療費はもちろん、慰謝料、休業損害もすべて含まれます。

したがって、治療費に 60万円かかっていた場合、慰謝料と休業損害をあわせて、120万円 − 60万円 = 60万円 しか受取額がないということになります。

自賠責保険に対して、被害者自身が請求する際には、支払請求書兼支払指図書という書面の職業欄に「主婦/主夫」の欄がありますので、そこに印をつけて、主婦(夫)であることを明示する必要があります。

 

基準2任意保険会社の基準

相手方の任意保険会社が被害者と示談交渉する場合、主婦の休業損害を独自に計算して提案を行います。

このときの基準が任意保険会社の基準となります。

任意保険会社は、対人無制限と設定しているので、自賠責保険のように 120万円の限度額は設定されていませんが、任意保険会社としては少しでも支払う金額が安いほうがいいので、主婦の休業損害は低めに計算されていることがほとんどです

経験上、ケースによっては、そもそも主婦(夫)休損が計上されていないこともありますし、自賠責保険の基準で提示されていることが多いように思います。

 

基準3裁判所の基準

3つ目の基準は、裁判所が主婦の休業損害を計算する際に用いる基準で、裁判基準といいます。

基本的な考え方は、自賠責保険の基準と同じで、1日あたりの休業金額 × 休業日数 で計算します。

しかし、休業金額と休業日数の内容について、考え方が異なります。

裁判所の基準では、平均賃金(賃金センサス)を用います。

平均賃金は毎年変動していますが、直近の統計である平成30年は 382万6300円となっています(女性、学歴計、年齢計)。

つまり、382万6300円 ÷ 365日 = 1万0483円 が1日あたりの休業金額となります。

自賠責保険の基準が 5700円ですので、実に 5000円近い金額の差があるわけです。

このように、どのような計算方法を採用するかによって、主婦の休業損害の金額は変わってきます。

このことを知っておかなければ、保険会社から提案された金額をそのまま妥当なものとして受け入れて、低額な補償にとどまってしまうという可能性もあるのです。

 

休業日数について

また、休業日数については、自賠責と同じように通院した日数で計算することもありますが、そもそも、家事は、毎日行うことなので、通院期間で計算することもあります。

つまり、通院期間180日の間に、90日通院した場合、90日を休業日数とするのではなく、180日を休業日数とする考え方です。

もっとも、こうした考え方に立った場合、全く家事ができなかった場合を100%として、割合的に休業損害を計算することが多くあります

具体例 180日間の治療期間のうち、ケガの家事への影響が、最初の30日を100%、次の60日を50%、残りの90日を30%とした場合


1万0483円 × 100% × 30日1万0483円 × 50% × 60日1万0483円 × 30% × 90日91万2021円 となります。

上記の計算はあくまで参考例です。

休業日数や支障の割合は、通院期間、実通院日数、けがの内容、程度、通院状況、家事への影響の度合いを考慮して決定していきます。

したがって、主婦の休業損害は裁判所の基準で計算すると、会社員と比べると、金額に幅が出てきます。

 

 

兼業主婦の場合

主婦の中でも、パートなどで仕事もしているという、いわゆる兼業主婦の場合、休業損害の計算は、実際に得ている収入に応じて、変わってきます。

現実の収入が平均賃金以下の場合

この場合には、専業主婦と同じく、賃金センサスを用いて休業損害を計算します。

ただし、裁判所の基準で計算をする場合には、実際に仕事を休んでいるかどうかも考慮要素になります。

具体的に保険会社の主張として、仕事を休んでいないのであれば、家事にもそれほど影響はなかったのではないかという主張がされることがあります。

 

現実の収入が平均賃金以上の場合

家事をしつつ正社員で働いている場合には、会社員と同じく、仕事を休んで給料が減少しているかどうかによって休業損害を計算することになります。

この点、正社員かつ主婦の場合、仕事もしつつ家事もしているわけですので、その分大変なわけで、どちらの休業損害も請求したいというように考える方もいらっしゃると思います。

しかしながら、交通事故の賠償実務ではこのような考え方は取られていませんので、あくまで主婦としての休業損害を請求するか、会社員としての休業損害を請求するかのどちらかになります。

 

 

主婦の休業損害の請求のポイント

ここまで主婦の休業損害について解説してきましたが、主婦の休業損害を請求するにあたってポイントがあります。

それは、「どのような家事ができなかったかを記録しておく」ということです。

主婦の休業損害をめぐって、実際の事案では、交通事故により家事がどの程度できなかったのかという点で被害者と保険会社の間で認識の相違が生じます。

これは、家事が家の中でのことであり、保険会社をはじめとする第三者には実態が見えにくいという性質があるからです。

会社員であれば、会社を休んだ場合、休業損害証明書を作成してもらうことで給料が減少していることは容易に証明できますが、家事はお金が実際に発生している訳ではありませんので、状況を詳細に把握するのは難しいものです。

したがって、主婦の休業損害を適切に補償してもらうためには、事故によって、どのような家事がどの程度できなかったのか、時間の経過に従って、きちんとまとめ、保険会社を説得できるようにすることが大切です。

そのための方法の一つとしては、日記をつけるとよいでしょう。

カレンダーのイラスト日記をつけることで、保険会社との示談交渉のときに、あとで日記を見返すことができ、家事ができなかったことを詳細に伝えやすくなります。

また、家事代行サービスを利用した場合や食事を作れず外食した場合、惣菜を購入した場合などでは、領収書をとっておくことも有益です

そして、主婦の休業損害を交渉するに当たって、専門家である弁護士に依頼して保険会社と交渉してもらうことも積極的に検討しましょう。

兼業主婦が主婦としての休業損害が認められ、約45万円獲得した事例はこちらをどうぞ。

専業主婦が休業損害を160万円増額に成功した事例はこちらをどうぞ。

 

 

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執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会  

保有資格 / 弁護士

専門領域 / 個人分野:交通事故 法人分野:企業顧問(労働問題)   

実績紹介 / 交通事故の相談件数年間300件超え(2019年実績)を誇るデイライ

ト法律事務所のパートナー弁護士であり、北九州オフィスの所長を務める。

交通事故をめぐる問題に関して、NHK、KBCなどのメデイアへの取材実績があ

り、弁護士向けのセミナー講師としても活動。


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