逸失利益の算定に当たり、株式の配当や不動産所得は対象になる?

執筆者:弁護士 木曽賢也 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

逸失利益の算定に使う被害者の基礎収入とは、被害者本人が働いていたことによって得ていた収入です。

したがって、被害者が働かなくても減少や喪失することのない株式の配当や不動産所得といった収入は原則として逸失利益の算定に使う基礎収入になりません。

 

逸失利益とは

交通事故によって、死亡または後遺障害が残存すると、まったく働けなくなったり、事故前と同じように働けなくなったりします。

そのため、働くことによって獲得していた収入が交通事故により減少や喪失する可能性があります。

こうした将来的な収入減少や喪失に対する補償を逸失利益といいます。

 

逸失利益の算定

死亡、後遺障害の逸失利益の算定には、被害者の基礎収入を使います。

死亡による逸失利益の算定式

基礎収入 ×(1-生活費控除率)× 就労可能年数に対応するライプニッツ係数

後遺障害による逸失利益の算定式

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

 

逸失利益の算定に使う基礎収入

逸失利益の算定に使う被害者の基礎収入とは、被害者本人が働いていたことによって得ていた収入です。

したがって、被害者が働かなくても減少や喪失することのない収入は逸失利益の算定に使う基礎収入になりません。

算定の対象とならない所得

具体的には以下のものが挙げられます。

1.利子所得

国債や社債、銀行などの金融機関の預貯金の利子等によって得られる利益。

2.配当所得

株式の配当や投資信託収益の分配などによって得られる利益。
ただし、株や為替取引を業としている場合には、事業所得と評価できる場合がでてきます。

3.不動産所得

家や土地、船舶、飛行機などの貸付けによって得られる利益。
ただし、時間貸し駐車場や下宿などはサービス業であるため、事業所得となります。

4.譲渡所得

土地や建物、株式を売却することによって得られる利益。

5.一時所得

懸賞や競輪、競艇、オートレースなどのギャンブルによる所得など。
保険料を支払った人自身で一度に全額受け取る満額保険金。

6.雑所得

事業、給与、山林、利子、配当、不動産、譲渡、一時、退職所得のいずれにも該当しない所得。

7.退職所得

退職金や退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与。

以上の所得は、交通事故によって後遺障害が残存しても、基本的には所得の増減に影響はないかと思われます。

したがって、逸失利益の算定において、基礎収入の対象とはなりません。

後遺障害の逸失利益については、複雑な計算があるため、適切な賠償金額を獲得するためには弁護士に交渉を依頼すべきであると考えます。

デイライト法律事務所では、交通事故を専門的に扱っている弁護士が在籍しております。

ぜひ一度ご相談ください。

 

 

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