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事故によるうつ病やPTSDは後遺障害認定される?【弁護士が解説】

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会  

保有資格 / 弁護士

専門領域 / 個人分野:交通事故 法人分野:企業顧問(労働問題)   


弁護士の回答

交通事故によるうつ病やPTSD等の非器質性精神障害は、9級、12級、14級の後遺障害等級が認定される可能性があります。

 

非器質性精神障害とは

非器質性精神障害とは、脳の組織的な損傷(器質性変化)を伴わない精神的な疾患のことです。

そのため、損傷のある器質的損害との対比で非器質性精神障害と呼ばれています。

抑うつや不安等の精神症状と同時に歩行障害、視覚障害、感覚障害などの身体的機能障害も出現します。

裁判で後遺障害が認められた非器質性精神障害には、うつ病・うつ状態、パニック状態、不安障害、適応障害、身体表現性障害、転換性障害(ヒステリー)、統合失調症、PTSDなどがあります。

身体の組織的損傷がない非器質性精神障害であっても、治療により症状改善の見込みがあります。

したがって、精神科医の非器質性精神障害の診断があっただけでは、後遺障害として認定されるわけではありません。

器質的変化のある傷害と同様、症状固定まで一定期間治療を受ける必要があります。

 

 

症状固定について

解説する医師のイメージイラスト骨折などをはじめとする器質的変化のあるけがに比べて、症状固定時期の判断が難しいという側面があります。

ただし、精神障害の適切な療養期間(症状固定)について、以下のような調査結果があります。

1)精神疾患を有する労働者の家庭内療養期間(急性期から安定するまでの期間)は3~6か月が適当

2)精神状態が落ち着き、職場復帰が可能になるまでが1年以内が適当

3)事例調査と精神科医調査より精神疾患の適正な療養期間(症状固定)は2年が適当

これを前提にするとある程度の長期的な治療が必要になります。

 

非器質性精神障害の認定基準

説明する男性のイラスト自賠責保険・共済の後遺障害等級認定は、労災基準を参考にして認定されています。

したがって、自賠責保険・共済における非器質性精神障害の後遺障害等級を認定する基準は、労災の障害等級認定基準である『神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について』(平成15年8月8日付厚生労働省労働基準局通達)を参考に認定されています。

この基準では、以下の(ア)の精神症状のうち1つ以上の精神症状を残し、かつ、(イ)の能力に関する判断項目のうち1つ以上の能力について障害が認められることが必要となります。

まず、精神症状の項目、能力に関する項目について、基準の説明をします。

(ア) 精神症状
  1. 抑うつ状態
    持続するうつ気分(悲しい、寂しい、憂うつである、希望がない、絶望的である等)、何をするのもおっくうになる(おっくう感)、それまで楽しかったことに対して楽しいという感情がなくなる、気が進まないなどの状態です。
  2. 不安の状態
    全般的不安や恐怖、心気症、強迫など強い不安が続き、強い苦悩を示す状態です。
  3. 意欲低下の状態
    すべてのことに対して関心が湧かず、自発性が乏しくなる、自ら積極的に行動せず、行動を起こしても長続きしない。口数も少なくなり、日常生活上の身の回りのことにも無精となる状態です。
  4. 慢性化した幻覚・妄想性の状態
    自分に対する噂や悪口あるいは命令が聞こえる等実際には存在しないものを知覚体験すること(幻覚)、自分が他者から害を加えられている、食べ物や薬に毒が入っている、自分は特別な能力を持っている等内容が間違っており、確信が異常に強く、訂正不可能でありその人個人だけ限定された意味付け(妄想)などの幻覚、妄想を持続的に示す状態です。
  5. 記憶又は知的能力の障害
    非器質性の記憶障害としては、解離性(心因性)健忘がある。自分が誰であり、どんな生活史を持っているかをすっかり忘れてしまう全生活史健忘や生活史の中の一定の時期や出来事のことを思い出せない状態です。
    非器質性の知的能力の障害としては、解離性(心因性)障害の場合があります。
    日常身辺生活は普通にしているのに改めて質問すると、自分の名前を答えられない、年齢は3つ、1+1は3のように的外れの回答をするような状態(ガンザー症候群、仮性痴呆)です。
  6. その他の障害(衝動性の障害、不定愁訴など)
    その他の障害には、上記①から⑤に分類できない症状、多動(落ち着きの無さ)、衝動行動、徘徊、身体的な自覚症状や不定愁訴などがある場合です。
(イ) 能力に関する判断項目
  1. 身辺日常生活
    入浴をすることや更衣をすることなど清潔保持を適切にすることができるか、規則的に十分な食事をすることができるかについて判定されます。
    なお、食事・入浴・更衣以外の動作については、特筆すべき事項がある場合には加味して判定が行われます。
  2. 仕事・生活に積極性・関心を持つこと
    仕事の内容、職場での生活や働くことそのもの、世の中の出来事、テレビ、娯楽等の日常生活等に対する意欲や関心があるか否かについて判定が行われます。
  3. 通勤・勤務時間の遵守
    規則的な通勤や出勤時間等約束時間の遵守が可能かどうかについて判定が行われます。
  4. 普通に作業を持続すること
    就業規則に則った就労が可能かどうか、普通の集中力・持続力をもって業務を遂行できるかどうかについて判定が行われます。
  5. 他人との意思伝達
    職場において上司・同僚等に対して発言を自主的にできるか等他人とのコミュニケーションが適切にできるかについて判定が行われます。
  6. 対人関係・協調性
    職場において上司・同僚と円滑な共同作業、社会的行動ができるかどうか等について判定が行われます。
  7. 身辺の安全保持、危機の回避
    職場における危険等から適切に身を守れるかどうかについて判定されます。
  8. 困難・失敗への対応
    職場において新たな業務上のストレスを受けたとき、ひどく緊張したり、混乱することなく対処できるか等どの程度適切に対応できるかについて判定されます。

上記の判断項目から、非器質性精神障害に認められるかを判断します。

以下は、具体的な等級の認定基準です。

 

9級10号

「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの」に該当する場合には、9級10号に認定されます。

具体的には、ⓐ又はⓑに当てはまる場合に認定されます。

 

解説する男性のイメージイラストⓐ 就労している、又は、就労の意欲がある場合
「(イ)能力に関する判断項目」のうち②~⑧のいずれか1つの能力が失われているもの、又は、判断項目の4つ以上についてしばしば助言・援助が必要と判断される障害を残しているものについて認定されます。

ⓑ 就労意欲の低下、又は、欠落により就労していない場合
判断項目①の身辺日常生活について時に助言・援助を必要とする程度の障害が残存しているものについて認定がされます。

 

12級相当

「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの」に該当する場合には、12級相当として認定されます。

具体的には、以下のⓐ又はⓑに当てはまる場合に認定されます。

 

解説する男性のイメージイラストⓐ 就労している、又は、就労の意欲がある場合
「(イ)能力に関する判断項目」の4つ以上について時に助言・援助が必要と判断される障害を残しているものについて認定されます。

ⓑ 就労意欲の低下、又は、欠落により就労していない場合
判断項目①の身辺日常生活を適切又は概ねできるものについて認定されます。

 

14級相当

「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの」に該当する場合には、14級相当に認定されます。

具体的には、「(イ)能力に関する判断項目」の1つ以上について時に助言・援助が必要と判断される障害を残しているような場合などに認定されます。

PTSDにより14級に認定された弊所の事例はこちらをご覧ください。

また、PTSDについて詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

まとめ

人身傷害チーム非器質性精神障害の後遺障害認定は、以上のような判断過程を経て判断されることになります。

もっとも、後遺障害認定されるには、交通事故が原因で非器質性精神障害を発症したといえることが必要です。

すなわち、因果関係を証明しなければならないのです。

身体的な障害の場合には、事故後のレントゲンやMRIなどで異常があることを客観的に証明することができます。

しかし、非器質性精神障害の場合は、人の内面的な事柄なので、簡単には立証できません。

事故の規模や態様、身体的な障害の程度、事故前の精神状態など様々な事情を踏まえて、因果関係が認められることを主張立証する必要があります。

交通事故による非器質性精神障害の後遺障害認定について、お悩みの方はぜひ一度交通事故専門の弁護士までご相談ください。

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執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

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保有資格 / 弁護士

専門領域 / 個人分野:交通事故 法人分野:企業顧問(労働問題)   

実績紹介 / 交通事故の相談件数年間300件超え(2019年実績)を誇るデイライ

ト法律事務所のパートナー弁護士であり、北九州オフィスの所長を務める。

交通事故をめぐる問題に関して、NHK、KBCなどのメデイアへの取材実績があ

り、弁護士向けのセミナー講師としても活動。


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