よくある相談Q&A

車の破損とペットの死亡。慰謝料は認められる?【弁護士が解説】

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会  

保有資格 / 弁護士

専門領域 / 個人分野:交通事故 法人分野:企業顧問(労働問題)   


慰謝料についての質問です。

長年愛用していた車に衝突され、車両が全損し、同乗していたペットの犬が死にました。

車の損害とペットについて慰謝料は認められませんか?

弁護士の回答

 

弁護士西村裕一イラスト

原則、物損の場合、慰謝料は認められません。

物の賠償は、修理費用、あるいは、全損の場合は時価額の賠償しか認められません。

ペットに関しても、ペットは法律上「物」として取り扱われているため、原則、慰謝料請求は認められません。

もっとも、例外的にペットの死亡について慰謝料が認められたケースもあります。

物損の慰謝料は、原則認められない

民法710条は、「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれかであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない」と規定されています。

この条文からすれば、慰謝料は、人身事故でも物損事故でも請求できるとも思えます。

また、長年にわたり、手入れして大事に乗ってきた愛車が、突然、交通事故により修理不能となり、廃車せざるを得なくなった時には、大きな精神的苦痛が伴うと思われます。

さらに、家族同然で一緒に暮らしていたペットが交通事故で亡くなった場合には、家族を失ったのと同じくらいの悲しみがあると思います。

しかし、実務上は交通事故で財物が破損した場合、破損した財物の価格が賠償されることで損害が回復され、財物を壊された被害者の精神的な苦痛も癒されると考えられています。

したがって、別途に慰謝料は発生しないと考えられているのです。

こうした考え方が取られているため、どんなに大事にしてきた愛車やペットでも、その時価額が賠償の限度となるのです。

もっとも、下記で紹介している裁判例のように、例外的に物の損害に対する慰謝料を認めている裁判例もあります。

 

 

物損事故での慰謝料請求があった裁判例

物損事故での慰謝料請求があった裁判例を紹介します。

自動車

否定

修理、改造をした自動車が追突事故に遭って損傷した事案です。車両が「事故車」とされる精神的苦痛としての慰謝料請求がされましたが、判決は、「事故車」として評価される分まで車両の賠償をされているとして慰謝料を認めませんでした。(東京地八王子支部H14.3.28)。

 

動物

ペット(飼い犬)の死傷の場合

肯定

パピヨン犬が死亡し、シーズー犬が骨折を受傷した事案において、飼い主に10万円の慰謝料を認めました(大阪地判H18.3.22)。

飼い犬に後遺症が残存した場合

肯定

ラブラドール犬が麻痺により排泄できなくなり、飼い主が圧迫排泄をする必要が生じた事案について、被害者に2名にそれぞれ20万円の慰謝料を認めました(名古屋高判H20.9.30)。

競走馬

否定

競走馬が交通事故で死亡した事案において、競走馬は売却される予定のある商品という理由から慰謝料を否定しました(札幌高判S56.4.27)。

 

その他

墓石

肯定

霊園内で墓石に衝突し、骨壺が露出した事案においては、先祖、故人が眠る場所として強い敬愛追慕の念の対象となるという特殊性から慰謝料10万円を認めました(大阪地判H12.10.12)。

芸術品(美術品)

肯定

陶芸家の自宅のコンクリート壁に自動車が衝突し、壁が倒れ、陶芸家の作品が破損した事案において、壊れた作品は陶芸家として認められた作品で被害者にとっての特別な主観的・精神的価値があり、作品の具体的な金額を認定できないとして慰謝料100万円の慰謝料を認めました。(東京地判H15.7.28)

住宅損傷

肯定

午前3時にトラックが民家へ飛び込んだ事案において、慰謝料額は50万円を認容しました(岡山地判H8.9.19)。

 

このように、基本的には物損の慰謝料は認められず、個人的な思い入れが強いという理由では慰謝料の請求は難しいでしょう。

 

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会  

保有資格 / 弁護士

専門領域 / 個人分野:交通事故 法人分野:企業顧問(労働問題)   

実績紹介 / 交通事故の相談件数年間300件超え(2019年実績)を誇るデイライ

ト法律事務所のパートナー弁護士であり、北九州オフィスの所長を務める。

交通事故をめぐる問題に関して、NHK、KBCなどのメデイアへの取材実績があ

り、弁護士向けのセミナー講師としても活動。


交通事故よくある相談Q&A一覧

なぜ交通事故は弁護士に依頼すべきなのか?

お問い合わせ Web予約