過失割合と過失相殺
交通事故には、以下の3通りがあります。
①自分の一方的な過失で発生するもの
②自分と相手、両方の過失で発生するもの
③相手の一方的過失で発生するもの
過失割合
①と③は、どちらかの運転者に100%の過失があるということですが、②の場合は、事故の過失がどちらにどれだけあったかが検討されます。
その結果が過失割合というものです。
例えば、交通事故が起こると、「過失割合が6対4」とか「過失割合が9対1」といった言葉をよく耳にすると思います。
過失相殺
このように、お互いに過失がある事故の場合、自分の損害の100%を相手に請求することができません。
例えば、相手と自分の過失割合が「過失割合が7対3」の事案で、自分の損害が1000万円で確定したとします。
この場合、相手に請求できるのは、700万円ということになります。
このように、自分の過失の分(30%)を控除して相殺することを過失相殺といいます。
過失相殺のポイント
交通事故の被害者の方が、適正な賠償を受けるために、過失割合を適切に算出することが重要となります。
過失相殺の割合については、基本的には過去に起こった同じようなケースの事故の裁判例を参考にして決められます(この過失割合については、判例タイムズ社が出版している「民事交通訴訟過失相殺率の認定基準」に事故の態様毎にくわしく記載されています。)。
過失割合は、賠償金の額に大きな影響をおよぼすため、相手方と争いになることが多くあります。
そこで、以下、相手方と争いになった場合、裁判所に過失割合を適切に認定してもらうためのポイントをご紹介します。
刑事事件記録の入手と検討
過失割合は、事故態様毎に決められているので、相手との交渉や裁判等では、まず、具体的な事故態様を主張・立証しなければなりません。
具体的な事故態様を検討するためには、刑事事件記録の活用が必要であり、また、立証方法としても重要となります。
刑事記録には、実況見分調書、被害者の診断書、被害車両や加害車両の写真、供述調書(被害者、加害者、同乗者、目撃者)が含まれているので、これにより、道路の形、幅員、交差点の構造、制限速度、照明の有無、道路見通しの良否、事故当時の天候、スリップ痕、車両の破片、車両の位置、車両の速度などが把握でき、事故態様を検討できます。
現場検証の実施
事故の態様を具体的にイメージするためには、刑事事件記録だけではなく、自らが現場へ行って事故状況の検証を行なうことが重要です。
そこで、過失割合に争いがあるような事案の場合、当事務所では、交通事故専門の弁護士が事故現場へ行き、ロードメジャーで距離を測定、事故の再現写真を撮る等して、事故当時の状況を把握するように務めています。
写真・図面の利用
相手方や裁判所に事故の状況を具体的に理解させるために、入手した刑事事件記録や現場検証の結果を基にして、事故現場の地図、加害車・被害車の位置と距離関係等を表示した図面、事故現場の写真等を用いてわかりやすく主張していくことがポイントとなります。
なお、写真には撮影方向を記載した図面を添付すると、現場の状況について、理解しやすくなるので効果的です。
