解決事例

治療期間1カ月間空いたが、異議申立てにより賠償が認められた事例

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会  

保有資格 / 弁護士

専門領域 / 個人分野:交通事故 法人分野:企業顧問(労働問題)   


※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Mさん
(福岡県遠賀郡)


受傷部位首(頚椎捻挫)
等級なし
ご依頼後取得した金額
約130万円

内訳

主な損害項目 サポート前 弁護士によるサポート結果
治療費 約3万5000円 約30万円
傷害慰謝料 約3万円 約68万円
休業損害 約1万円 約35万円
最終支払額 約8万円 約130万円

※その他にも治療費など表には記載していない損害があります。

 

状況

Mさんは、前方の車両が停車していたため、その後方に停車していたところ、加害車両に追突されました。

この事故により、Mさんは、頸椎捻挫等の傷害を負いました。

事故直後は、首に痛みがあったものの塗薬を塗って、安静にしていると徐々に痛みは治まっていきました。

事故から2週間ほど経過してから、2回目の病院に行った際には、Mさん自身も、これが最後の病院になるかもしれないと思うほど経過は良好でした。

しかし、病院からもらった薬がなくなって数日した頃、Mさんは徐々に頭が重くなり首から背中にかけて痛みが走るようになりました。

本来は、この時点ですぐに病院に行くべきだったのですが、Mさんには、仕事があり、また家庭の事情もあって、なかなか病院に行くことができませんでした。

そうしている内に、どんどん痛みが強くなってきて、軽いものを首に下げるだけでも痛みが生じるようになり、どうしても我慢できなくなったため、再度病院に行きました。

そうしたところ、医師からリハビリを開始することを勧められたので、通院してリハビリを行うことになりました。

通院を再開することを相手方保険会社に伝えたところ、相手方保険会社は治療費を支払うかどうか決めるのに、自賠責保険に確認させてほしいと言ってきたのです。

Mさんは、何のことか分かりませんでしたが、相手方保険会社からの連絡を待っていました。

すると数週間後に相手方保険会社から連絡があり、自賠責保険が3回目以降の治療費を認めないので、相手方保険会社も3回目以降の治療費は支払わないと言ってきたのです。

治療費が認められない理由は、治療期間が1カ月間空いているため、事故と治療の関係性が認められないという説明でした。

突然の保険会社からの主張に困惑したMさんは、どう対応すればよいかわからず当事務所に相談に来られました。

 

弁護士の関わり

任意保険会社は、治療費を支払う義務があるかどうか判断が難しい場合には、事前に自賠責保険が治療費の支払いを認めてくれるか確認する場合があります。(詳しくは、下記の「補足」で説明します。)

本件でも、相手方の保険会社は、Mさんの3回目以降の治療費を支払うかどうか判断するにあたって、自賠責保険に確認をしていました。

その結果、自賠責保険では、治療費を支払うことができないという回答であったため、相手方保険会社も3回目以降の治療費を支払わないという判断がなされたのです。

そこで、弁護士は、その自賠責保険が下した判断を覆すために、異議申立をすることにしました。

本件で、自賠責保険がMさんの3回目以降の治療費を認めなかったのは、2回目と3回目で治療期間が1カ月間空いていたからでした。

弁護士は、Mさんからどうして1か月間の間病院に行かなかったのかを詳細に聞き取りました。

そうすると、仕事と家庭の事情でどうしても病院に行けず、痛みに耐えながら仕事をされていることが分かりました。

弁護士は、これらの事情をまとめた陳述書(被害者の話をまとめた書面)を作成し、また、病院のカルテを取り寄せ、Mさんの言い分に沿う記載を指摘してMさんの言い分が真実であることを具体的に異議申立書に記載しました。

そうしたところ、異議申立ては認められ、自賠責保険は3回目以降の治療費の支払いを認めました。

この結果に基づいて、相手方保険会社に慰謝料や休業損害など請求したところ、冒頭に記載してある賠償金が認められました。

 

補足

任意保険会社と自賠責保険の仕組み

自動車の交通事故の場合、自賠責保険が使用できます。

自賠責保険は、強制加入保険で、自動車を走行するにあたっては、必ず加入しなければなりません。

加入せずに自動車で走行した場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることになります。

自賠責保険は、120万円という限度額(後遺障害は除く)はありますが、その範囲であれば、自賠責基準に従って賠償金を受け取ることができます。

任意保険会社は、簡単にいうと、自賠責では賄えない部分を補償する保険です。

加害者が任意保険に加入している場合には、加害者の任意保険会社に賠償請求することがほとんどなので、被害者としては、自賠責保険を特に意識することなく事件が解決するということも多いと思います。

加害者の任意保険会社は、病院と直接やりとりをして治療費を支払ってくれます(「一括対応」といいます。)が、この場合、加害者の任意保険会社は、支払った治療費を自賠責保険に請求することができるのです。

仮に、自賠責保険が治療費を認めてくれないとすれば、その分の治療費は任意保険会社が負担することになるので、加害者の任意保険会社としても、自賠責保険が治療費の支払いを認めてくれるかどうかは非常に重要なのです。

そこで、自賠責保険が治療費の支払いを認めてくれるか微妙な場合には、任意保険会社は事前に治療費を支払ってくれるか確認する手続きをとります。

この手続きの結果、自賠責保険が「支払いをしない」という判断をすると任意保険会社も支払いをすることはありません。

こうした場合に、加害者の保険会社に賠償を請求するには、自賠責の「支払わない」という結論を変更させなければなりません。

そのための手続きが、異議申立です。

異議申立は、自賠責保険の判断に対して不服を申し立てる制度です。

本件では、当初、自賠責保険は治療期間が1カ月空いているために、1カ月空いた以降の治療は事故と関係のない治療と判断したのです。

本件に限らず、治療期間が1カ月空いてしまうと事故との関係性が認められないことがとても多いです(医師の指示であえて経過観察となっているような場合は除きます)。

こうした場合の異議申立では、どうして1カ月間空いてしまったのか、合理的な理由を説明しなければなりません。

説明にあたっては、被害者の陳述書などがメインになるかと思いますが、被害者の話を根拠づける客観的な資料があれば、より説得的になります。

本件では、Mさんが1カ月間通院できなかった理由が合理的なものであったことから、異議申立てが認められました。

しかし、体の調子が悪くなったらすぐに病院に行くべきであり、そもそも1カ月間治療期間を空けないをことが大切です。

 

 

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会  

保有資格 / 弁護士

専門領域 / 個人分野:交通事故 法人分野:企業顧問(労働問題)   

実績紹介 / 交通事故の相談件数年間300件超え(2019年実績)を誇るデイライ

ト法律事務所のパートナー弁護士であり、北九州オフィスの所長を務める。

交通事故をめぐる問題に関して、NHK、KBCなどのメデイアへの取材実績があ

り、弁護士向けのセミナー講師としても活動。


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