⑤交通事故の慰謝料とは?【弁護士が解説】

交通事故における慰謝料とは

人身傷害チーム交通事故の慰謝料は、交通事故によって被った精神的苦痛に対して支払われる賠償金です。

人が交通事故によって受ける精神的苦痛の程度は、それぞれの性格や価値観によって変わってくると思います。

したがって、本来であれば、個別事情を一つ一つ加味して具体的な慰謝料金額を導き出すことが望ましいのかもしれません。

しかし、そうした検討の作業は多くの時間を要し、被害者に迅速な賠償を行うことができなくなる可能性があります。

また、類似案件であるにもかかわらず、慰謝料の金額に差が出て不公平な結果になる可能性もあります。

こうした事情を踏まえて、交通事故賠償実務では、慰謝料の金額はある程度類型化されてされているのです。

慰謝料の種類には、入通院慰謝料、後遺傷害慰謝料、死亡慰謝料の3種類があります。

また、それぞれの慰謝料について、自賠責保険基準、任意保険会社基準、裁判基準の3つの基準があります。

 

 

慰謝料の基準について

交通事故の慰謝料の基準には、自賠責保険の基準、任意保険会社の基準、裁判基準の3つの基準があります。

自賠責保険の基準

自賠責保険とは、道路を走行するにあたって必ず加入しなければならない保険であり、加入せずに、道路を走行すると刑事罰が科されます。

補償の内容としては、被害者救済のための最低限の基準となっています。

治療関係費や、慰謝料、通院交通費、休業損害など傷害部分の賠償は、120万円が限度額とされています。

後遺障害部分については、各等級に応じて限度額が定められています。

自賠責保険の基準は、3つの基準の中では、最も低い賠償水準です。

自賠責保険について詳しくはこちらをご覧ください。

 

任意保険会社の基準

任意保険会社の基準は、損害保険会社が内部的に持っている賠償の基準です。

明確な賠償基準は、各社によって異なる部分はありますが、自賠責保険の基準よりは、高い賠償水準になります。

 

裁判基準

裁判基準は、裁判になった場合に、裁判所が用いる賠償の水準であり、3つの基準の中で最も高い賠償水準です。

もっとも、示談交渉の段階であっても、弁護士が介入した場合には、基本的に裁判基準を前提に賠償の交渉を行います。

 

裁判をせずに、裁判基準で解決した弊所の解決事例はこちらをご覧ください

 

 

入通院慰謝料(傷害慰謝料)について

入通院慰謝料(傷害慰謝料)とは

交通事故に遭ってケガをした場合には、入院あるいは通院して治療を継続することになります。

こうした入院や通院することに対する慰謝料を入通院慰謝料、あるいは、傷害慰謝料と呼びます。

以下では、各賠償基準に基づく入通院慰謝料の計算方法について説明します。

 

自賠責保険基準

自賠責保険では、1日4300円 ×「対象の日数」で計算します。
(※2020年3月31日以前に発生した事故は、1日4200円です。)

対象の日数の計算方法は、以下①、②のいずれか日数が少ないほうで計算します。

  • ① 通院期間の日数
  • ② 実際に通院した日数の2倍の日数

具体例 ①通院期間120日、②実通院日数が50日の場合

この場合、通院期間120日 > 100日 = 実通院日数50日 × 2 となるため、対象の日数は100日となります。

したがって、4300円 × 100日 = 43万円となります。

 

任意保険会社基準

任意保険会社の基準は、各保険会社により設定しているため、一般化することはできませんが、自賠責保険の基準よりは高い水準となっています。

相手保険会社から賠償の提示がなされる場合には、任意保険会社の基準が使用されることになります。

もっとも、交渉段階において、相手保険会社が任意保険会社の基準を使用する義務があるわけではありません。

ですから、保険会社の担当者によっては、自賠責保険の基準で賠償の提示をしている場合も多々あります。

交通事故の被害者としては、安易に示談するのではなく、その提示内容が適切なものなのか、よく検討されるべきでしょう。

個人で判断つかない場合には、専門の弁護士に相談すべきでしょう。

 

裁判基準

入通院慰謝料の裁判基準の計算方法は、入通院期間によって計算することになります。

骨折や脱臼などの重傷の案件については、下表の別表1を使用します。

別表1

入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314 321 328 334 340
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325 332 336 342
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322 329 334 338 344
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 331 336 340 346
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 333 338 342 348
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 335 340 344 350
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 337 342 346
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 339 344
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 341
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332
12月 154 183 211 236 260 280 298 314 326
13月 158 187 213 238 262 282 300 316
14月 162 189 215 240 264 284 302
15月 164 191 217 242 266 286

上記表での慰謝料金額の計算方法を説明します。

例えば、入院3ヶ月、通院3か月で症状固定(あるいは治癒)した場合 「入院」の「3月」の列と「通院」の「3月」の行が交わる欄に記載のある「188」が入通院慰謝料金額となります。つまり、188万円です。

さらに、例えば、入院はなく、通院を6か月で症状固定(あるいは治癒)した場合 「通院」の「6月」のすぐ右の欄に記載のある「116」が入通院慰謝料金額となります。つまり、116万円となります。

なお、通院が長期間にわたる場合には、症状、治療内容、通院頻度を踏まえて、実際に通院した日数の3.5倍程度を通院期間として、慰謝料の計算をすることがあります。

例えば、治療が長期間にわたる場合で、実際の通院日数が40日の場合には、40日 × 3.5 = 140日を通院期間として、考える場合があるということです。

次に、むちうちや打撲などの案件については、下表の別表2を用いて入通院慰謝料を計算します。

 

別表2

入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204 211 218 223 228
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206 212 219 224 229
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207 213 220 225 230
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208 214 221 226 231
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203 209 215 222 227 232
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204 210 216 223 228 233
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211 217 224 229
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212 218 225
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213 219
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208 214
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209
11月 117 135 150 160 171 179 187 193 199 204
12月 119 136 151 161 172 180 188 194 200
13月 120 137 152 162 173 181 189 195
14月 121 138 153 163 174 182 190
15月 122 139 154 164 175 183

上記表での慰謝料金額の計算方法を説明します。

例えば、入院1ヶ月、通院5か月で症状固定(あるいは治癒)した場合 「入院」の「1月」の列と「通院」の「5月」の行が交わる欄に記載のある「105」が入通院慰謝料金額となります。つまり、105万円です。

さらに、例えば、入院はなく、通院を7か月で症状固定(あるいは治癒)した場合 「通院」の「7月」のすぐ右の欄に記載のある「97」が入通院慰謝料金額となります。つまり、97万円となります。

なお、別表1を利用する場合と同様に、通院期間が長期間にわたる場合には、症状、治療内容、通院頻度を踏まえて、実際に通院した日数の3倍程度を通院期間として、慰謝料の計算をすることがあります。

別表1の場合は、通院実日数の3.5倍程度ですが、別表2の場合には、通院実日数の3倍程度となっています。

示談交渉で裁判基準の入通院慰謝料を獲得した弊所の解決事例はこちらをご覧ください

 

傷害慰謝料の増額事由

裁判基準においては、傷害の部位、程度によって、上記の表によって導かれた金額の20~30%程度増額すると考えられています。

また、生死が危ぶまれる状態が継続したとき、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰り返したとき等も増額されることがあります。

 

 

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは

リハビリ後遺障害慰謝料とは、交通事故によって後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料です。

後遺障害の認定は、損害保険料率算出機構に後遺傷害申請を行い認定してもらうか、あるいは、裁判をして裁判所に認定してもらう必要があります。

通常、自賠責保険が適用される事案では、まず、損害保険料率算出機構に後遺障害の申請を行います。

その上で、結果に不満がある場合には、再度、損害保険料率算出機構に審査してもらうために、異議申立てを行うか、あるいは、裁判をして裁判所に判断してもらうことになります。

以上のような、いずれかの過程を経て、後遺障害が顎堤した場合に後遺障害慰謝料を請求することができます。

後遺障害に関する弊所のサポートについて詳しくはこちらをご覧ください。

 

後遺障害慰謝料の基準について

任意保険会社の基準は、各保険会社が内部的に持っている基準で正確には数値化できないため、以下では、自賠責保険の基準と裁判基準を表にまとめています。

等級 自賠責保険基準 裁判基準
第1級 1150万円(1650万円) 2800万円
第2級 998万円(1203万円) 2370万円
第3級 861万円 1990万円
第4級 737万円 1670万円
第5級 618万円 1400万円
第6級 512万円 1180万円
第7級 419万円 1000万円
第8級 331万円 830万円
第9級 249万円 690万円
第10級 190万円 550万円
第11級 136万円 420万円
第12級 94万円 290万円
第13級 57万円 180万円
第14級 32万円 110万円

※自賠責保険基準の1級、2級の( )内は、介護を要する場合の慰謝料です。

 

 

死亡慰謝料

死亡慰謝料とは

死亡慰謝料とは、交通事故によって被害者が死亡させられたことによって発生する慰謝料です。

被害者本人の慰謝料はもちろんですが、遺族固有の慰謝料も認められています。

 

自賠責保険基準

自賠責保険の基準では、亡くなった被害者本人の慰謝料は400万円とされています。
(※2020年3月31日以前の事故は350万円です。)

遺族固有の慰謝料を請求することができるのは、父母、配偶者、子に限られおり、請求権者の人数に応じて金額が決まっています。

1名の場合には550万円、2名の場合には650万円、3名以上の場合には750万円となっています。

また、被害者に被扶養者がいる場合には、上記から算定される金額に200万円が加算された金額が遺族の慰謝料となります。

例えば、被害者に配偶者と扶養すべき子ども2人がいた場合には、以下の金額になります。

具体例

400万円(被害者本人)+(750万円+200万円)=1350万円

裁判基準

死亡慰謝料の裁判基準は、被害者の立場によって金額の目安が決められており、下表のようになっています。

被害者の立場 死亡慰謝料金額
一家の支柱 2800万円
母親・配偶者 2500万円
子ども、高齢者、独身の男女 2000万円〜2500万円

一家の支柱とは、亡くなった被害者が被害者の家族の家計を支えていた場合です。

弊所の死亡事故のご遺族のサポートについてはこちらをご覧ください。

 

慰謝料の増額事由

裁判においては、慰謝料の増額が認められるのは以下の場合です。

  • 交通事故を意図的に発生させた場合(故意がある場合)
  • 重過失(無免許、ひき逃げ、酒酔い、著しいスピード違反、ことさらに信号無視、薬物等の影響により正常な運転ができない状態で運転など)がある場合
  • 著しく不誠実な態度等がある場合

こうした事情がある場合には、慰謝料増額事由として主張していくべきです。

また、上記に記載のない事情であっても、通常の交通事故からは発生しないような特に苦痛を伴うような個別事情がある場合には、慰謝料増額事由として主張すべきでしょう。

判例 死亡事故での慰謝料増額裁判例

兼業主婦の事例で、加害者が多量に飲酒しており(呼気一リットル中約0.55ミリグラム)正常な運転ができない状態で運転し、仮眠状態になったことで事故を発生させていること、運転の動機が身勝手(翌朝も車で出勤したい)であることなどの事情を勘案して本人分2700万円、夫200万円、子3人各100万円の合計3200万円の賠償を認めています(東京地判平18.10.26)。

判例 傷害事故での慰謝料増額裁判例

加害者が、赤信号無視で交差点に進入したものの、警察に青信号で侵入したと虚偽の供述をした結果、被害者が被疑者として取り調べを受けたことや、被害者が胃炎や円形脱毛症を発症するに至ったことなどから、慰謝料として200万円(事故から1年9カ月通院)が認められました(名古屋地判平13.9.21)。

 

 

 

慰謝料の金額に影響する相手方の主張

素因減額

素因減額とは、被害者の疾患や心因的な要因などが原因で、損害が発生拡大した場合に損害額を一定割合控除することです。

交通事故で負傷した部位について、事故前から障害があり、それが原因で治療期間が長引いたり、後遺障害の等級が重くなるような場合には、相手方から素因減額の主張がされる可能性があります。

素因減額が認められると、賠償金が一定割合控除されることになります。

 

素因減額について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

過失相殺

過失相殺とは、交通事故の発生について、被害者側にも落ち度があるときに、損害額を被害者の責任割合に応じて控除するという考え方です。

過失相殺は、被害者に何らかの原因があった場合に、被害者に生じた損害のすべてを加害者に負わせるのは妥当ではなく、被害者の責任部分については、減額するというのが損害の公平な分担であるという考えに基づいています。

過失相殺について詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

物損で慰謝料請求できるか

交通事故によって、自動車などが破損した場合には、その修理費用、あるいは、修理費用が時価額を上回る場合にはその時価額が賠償されることになります。

こうした修理費用や時価額とは別に、物損について慰謝料が請求できるかについてですが、原則として物損の慰謝料は認められません。

修理費用や時価額が賠償されることで、物損については、被害者の精神的苦痛も慰謝されるので、別個に慰謝料は発生しないと考えられています。

ただし、ペットが事故により死亡した場合など、例外的に慰謝料が認められる場合もあります。

物損の慰謝料に関して詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

慰謝料の請求時期

弁護士西村裕一画像入通院慰謝料は、通院期間や通院日数によって金額が決まります。

したがって、入通院慰謝料は、症状固定になった時点、あるいは、ケガが治癒した時点で治療期間が確定するため、これらの時点以降、請求が可能になります。

もっとも、症状固定として後遺障害の申請をする場合には、後遺障害の結果が確定した後に、後遺障害慰謝料などとまとめて請求することが多いです。

保険会社によっては、後遺障害の結果が出るまで、入通院慰謝料の示談も行わないと主張してくることもあります。

後遺障害慰謝料を請求できるのは、後遺障害の等級が確定した時点です。

損害保険料率算出機構に対して、後遺障害申請を行い等級認定がなされた時点から請求が可能です。

死亡慰謝料については、被害者が亡くなった後に、請求することになります。

交通事故の慰謝料でお困りの方は、お気軽に弊所までご相談ください。

弊所への無料相談についてはこちらをご覧ください。

 

 

その他の損害についての計算方法

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