④死亡による逸失利益【弁護士が解説】

死亡逸失利益とは

死亡逸失利益とは、被害者が亡くなったことで、将来得ることができたであろう収入がなくなってしまったことに対する補償です。

死亡逸失利益の計算式は、以下の計算式になります。

 

死亡逸失利益の計算式

基礎年収 ×(1 − 生活費控除率)× 就労可能年数に対応するライプニッツ係数

したがって、死亡逸失利益の算定にあたっては、①基礎収入、②生活費控除率、③就労可能年数に対応するライプニッツ係数を確定させなければなりません。

 

 

基礎収入

基礎収入の考え方は、被害者それぞれの立場によって変わってきます。

以下では、それぞれの立場について基礎収入の算定方法を説明します。

給与所得者(会社員)の場合

給与所得者の基礎収入

給与所得者とは、雇用契約等に基づき、会社から給料をもらっている方々です。

会社員や契約社員、アルバイト、パートなどの方々が給与所得者となります。

給与所得者の場合、原則として、事故前の収入を基礎として基礎収入を定めることになります。

ここでいう収入は、税金等の控除がされていない総支給額を指します。

つまり、源泉徴収票に記載のある「支払金額」が基礎収入の金額となります。

収入の証明は、給与所得者の場合、源泉徴収票を用いることが多いですが、役所が発行する所得証明でも構いません。

 

若年者の基礎収入

上記のように、給与所得者は、原則、事故前の収入を基礎収入として計算することになりますが、この方法を貫くと10代、20代で就労している若年者は不利になることがあります。

つまり、10代、20代の就労している若年者は、一般的に収入はそれほど多くありませんが、将来的には収入が増えることが予想されます。

にもかかわらず、将来の収入の補償である逸失利益の算定にあたって、事故前の少ない年収を基礎収入とするのは妥当とはいえません。

また、大学生の基礎収入は、賃金センサス(平均賃金がまとめられたもの)を利用して決められますが、賃金センサスの男女の平均賃金は 497万2000円(平成30年)となっており、一般的な企業が若年者に支払う給料の平均よりも高額になっています。

大学生は、賃金センサスを基礎収入とできるのに、大学を卒業して間もない若年者は、事故前の実収入を基礎収入とするのは明らかに不均衡です。

したがって、概ね30歳未満の若年者については、賃金センサスを利用して基礎収入を決めることが多いです。

もっとも、賃金センサスの平均賃金の100%を基礎収入にできるとは限りません。

逸失利益は、将来の収入を補償するものなので、将来において賃金センサスの年収額を得ることができる蓋然性(がいぜんせい)がなければ、100%を基礎収入とすることはできないのです。

その当時の年齢や年収、職種、資格の有無などを勘案して、場合によっては賃金センサスの金額から一定の割合を控除した金額を基礎収入とされることもあります。

なお、当然のことながら、賃金センサスよりも高額な収入を得ている場合には、実収入を基礎収入とすることになります。

 

事業所得者の場合

事業所得者の基礎収入

自営業者、自由業者、農林水産業などについては、事故前年の確定申告の所得額を基礎収入とします。

ただし、青色申告控除や専従者控除など、税金上の優遇措置を利用している部分については、所得額に加算して基礎収入とすることができます。

また、所得金額に波がある場合には、過去数年分を平均して計算することもあります。

逸失利益について事故前年年収を基礎収入として裁判基準で合意できた事例はこちらをご覧ください。

 

確定申告の所得を超える基礎収入の主張

事業所得者の場合、節税のために所得を抑えているという話を聞くことがあります。

そういった場合には、その確定申告の所得を超える所得金額を証明することができれば、その金額を基礎収入とすることができます。

もっとも、この証明は容易ではありません。

本来、適切な所得を確定申告で申告しなければならないところ、それと異なる所得を主張することになるからです。

裁判所も、確定申告の所得よりも高額の所得を認める場合には、厳格な立証を求める傾向にあります。

確定申告と異なる所得を主張する場合には、客観的な証拠によって主張立証しなければ認められないでしょう。

 

家族で事業を営んでいる場合

所得が家族の労働などの総体のうえで形成されている場合、所得に対する本人の寄与部分の割合によって算定することになります。

この場合、被害者本人の労働状況や役割などを明確に主張立証しなければなりません。

 

確定申告をしていない場合

確定申告をしていない場合には、帳簿や、通帳の取引履歴などから、実際の収入を算出する必要があります。

通帳に取引先からの入金の記録があるのであれば、それを売上とし、業務関係に関する請求書や領収書の合計金額を経費として考えて所得を出すことが考えられます。

もっとも、通常、お金の流れは、このように単純ではない場合が多いかと思いますので、実収入額の証明は容易ではないでしょう。

 

会社役員の場合

会社役員の基礎収入については、その報酬を労務対価部分(働いたことに対する報酬部分)と利益配当部分に分けて考えられており、労務対価部分のみが基礎収入として認められています。

労務提供の対価かどうかは、会社の規模、役員報酬の額、当該役員の職務内容、事故後の当該役員の報酬額の推移などを総合考慮して判断されます。

株式の配当や不動産所得は、基礎収入の対象になるかについてはこちらをご覧ください。

家事従事者(主婦・主夫)の場合

家事従事者(主婦・主夫)の基礎収入

家事従事者は、自宅で家事をしているのであり、家事をしたことの対価として収入を得ているわけではありません。

したがって、そもそも、収入が0なので、逸失利益は発生しないとも思われます。

しかし、家事従事者の家事労働も金銭的に評価されるべきと考えられているため、家事従事者も逸失利益の請求が可能です。

家事従事者については、賃金センサス(第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額)を基礎として、収入が認められます。

平成30年度の賃金センサスでは、女性平均が382万6300円とされており、同金額を基礎収入として考えます。

 

兼業主婦・主夫の場合

パートタイマーや内職等の兼業主婦・主夫については、現実の収入額と女性労働者の平均賃金額のいずれか高い方を基礎として算出することになります。

なお、主夫の場合であっても、使用する賃金センサスは、女性の平均賃金を使用します。

 

無職者の場合

失業者の基礎収入

失業者は、事故当時においては、収入はありません。

しかし、将来において全く収入を得ないということは考えづらく、就職して収入を得る可能性もあります。

したがって、失業者については、労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性があるものについては、基礎収入が認められます。

具体的には、再就職によって得られたであろう収入が基本となりますが、特段の事情のないかぎり失業前の収入が参考となります。

失業前の収入が平均賃金以下の場合には、平均賃金が得られる蓋然性があれば、賃金センサスを基礎収入とすることができます。

 

学生の基礎収入

学生については、賃金センサス(第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男女別全年齢平均の賃金額)をもとに基礎収入が算定されます。

女子年少者について、保険会社は女性労働者の平均賃金を主張してくることもありますが、男女を含む全労働者の全年齢平均賃金で算定すべきです。

 

高齢者の場合

事故当時に就労していなかった場合でも、就労の蓋然性が認められれば、賃金センサスの年齢別平均賃金を基礎収入として逸失利益が認められる場合があります。

また、年金を受給している場合には、年金額も考慮されます。

老齢年金、障害年金などは、逸失利益性が認められますが、遺族年金については、逸失利益性は否定されています。

弊所の高齢者の死亡事故の解決事例はこちらをご覧ください。

 

 

生活費控除率

被害者が亡くなった場合、亡くなった以降の生活費はかからなくなるため、逸失利益の算定にあたっては、生活費分を控除する考え方がとられています。

その際に、使用される生活費控除率は、下表のように被害者の立場や性別によって分けて考えられています。

生活費控除率
一家の支柱
(生計の中心となる人)
扶養者 1人 40%
扶養者 2人 30%
女性(独身、幼児を含む) 30%
男性(独身、幼児を含む) 50%

 

女子の年少者の場合

裁判例上、女子の年少者の逸失利益については、全労働者(男女計)の全年齢平均賃金を基礎収入とする場合、生活費控除率を40〜45%とするものが多い傾向です。

年金部分について

年金部分についての生活費控除率は、通常よりも高い割合になる傾向があり60%程度の控除率となることも少なくありません。

 

 

就労可能年数に対応するライプニッツ係数

就労可能年数

就労可能年数は原則として67歳です。

例えば、死亡時42歳だとすると、25年間が就労可能年数となります。

ただし、67歳までの年数が、簡易生命表の平均余命の2分の1以下になる場合には、平均余命年数の2分の1の期間が就労可能年数となります。

具体例 被害者が58歳の場合


67歳までは9年です。

平成30年簡易生命表の場合

58歳の平均余命は25.56年

2分の1にすると、25.56 ÷ 2 = 12.78年

9年よりも長くなるので、12.78年を就労可能年数として考えることになります。

簡易生命表(平成30年)はこちらをご覧ください。

未成年者の就労の始期については、18歳が基本ですが、大学卒業を前提とする場合、大学卒業予定時が始期となります。

 

ライプニッツ係数

ライプニッツ係数とは

逸失利益は、将来において得ることができたであろう金銭を一時金として先に受け取ることになります。

将来受け取ることができたはずの金銭を前もって得られることによって、被害者には利息相当分の利益が生じることになります。

こうした利息分を控除するために使用されるのがライプニッツ係数です。

このライプニッツ係数は、現在の民法の法定利率が年5%となっているため、5%の運用利益が出るものとして計算されています。

しかしながら、民法の改正により、この法定利率は3%に変更されることになりました。

したがって、2020年4月1日以降の事故に関しては、新しいライプニッツ係数を使用することになります。

2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合

ライプニッツ係数表(法定利率5%)をご覧ください。

 

2020年4月1日以降に発生した交通事故の場合

ライプニッツ係数表(法定利率3%)をご覧ください。

 

具体的な計算例

具体例① 35歳、男性、独身、会社員、年収450万円のケース(2020年4月1日以降の事故として算定

基礎収入:450万円
生活費控除率:50%

就労可能年数:32年
就労可能年数に対応するライプニッツ係数:20.3888(法定利率3%)


死亡逸失利益の計算式

450万円 ×(100% – 50%)× 20.3888 = 4587万4800円

このケースでは、4587万4800円が死亡逸失利益となります。

具体例② 15歳、女性、学生のケース(2020年4月1日以降の事故として算定

基礎収入:497万2000円(平成30年賃金センサス男女平均)
生活費控除率:30%
就労開始年齢:18歳(高卒で就労する前提)
ライプニッツ係数:23.3376


この場合のライプニッツ係数は、事故時の年齢15歳から67歳までの52年間のライプニッツ係数(26.1662)から、15歳から就労可能年数の18歳までの3年間分のライプニッツ係数(2.8286)を差し引いて計算します。

したがって、このケースの使用するライプニッツ係数は、26.1662 – 2.8286 = 23.3376となります。

死亡逸失利益の計算式

497万2000円 ×(100% – 30%)× 23.3376 = 8122万4183円

このケースでは、8122万4183円が死亡逸失利益となります。

弊所の死亡事故のサポートについては、こちらをご覧ください。

 

 

その他の損害についての計算方法

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